社労士や税理士の方々が人事コンサルティングを行っていることについての率直な感想
おそらく20年ほど前からでしょうか、社会保険事務所や税理士事務所等で、社 会保険手続きや会計・税務処理をメイン業務としつつも、その傍らで人事・組織コンサルティングを比較的低価格帯で行っているケースを見聞きすることが増えてきました。
そういったところでのコンサルティングメニューをみると、多くは次のような内容になっています。
● 法改正に伴う就業規則などの人事関連規定の作成サポート
● 給与制度や評価制度などの設計サポート
例えば、社会保険労務士に関していえば、人事労務関係の法律にはある程度精通しているので法律に抵触しない範囲での就業規則等の改定には対応することができると思いますが、会社の事業特性や経営・人事の戦略といった視点に立って人事制度の見直しや運用サポートを行うことについては「?」というのが率直な感想です。
また、給与や評価などの制度設計についてもネットや書籍などを参考に拾い読みした形で実施されているケースを目にします。
そもそも社会保険労務士や税理士の方は本業が別にあるわけですから、人事コンサルティングの経験値が圧倒的に不足していますし、こういった方々は20代や30代半ばまでに勤め先を退職して独立・開業された方が多いため、会社における経営中枢としての立場やセクションで仕事を行った経験もほとんどありません。そういったバックボーンの方が〝本当にプロフェッショナルレベルでの人事コンサルティングを行うことできるのか?〟という率直な疑問です。
※ もちろん一部にはそうでない方もいらっしゃるでしょうから、全てがそうであると言うつもりは毛頭ありませんが…
というのも、人事関連の法律・法令に抵触しない形で人事諸規程を整備することと、クライアント企業における経営・人事戦略の一環として人事制度を策定していくこととでは、求められる目線やノウハウが異なるためです。
私は、長年にわたり人事コンサルティングを本業として取り組んできましたし、また法人内においても人事統括責任者として様々な経験や実績を積み重ねてきましたので、人事コンサルティングとしての知見・洞察力や中身の質的レベルといった視点でみた場合、私どもが対応するコンサルティング範囲のごく一部ではあるものの、そういった方々と同じ土俵に立たされていることには少々違和感を感じています。
要するに個人的には「餅は餅屋」であるべきだという風に思うのですが、お客様サイドからみれば、例えばホームページの閲覧や企画書の提出段階で士業の方やコンサルタントからの話を聞くだけでは「そのあたりのことはわかりにくいと思いますし、どこへ委託したらよいかなども判断が難しい」ところだと思います。
ただ間違いなく言えることは、世の中の医師と同様に、コンサルタントも〝ピンキリ〟の世界だということです。もっといえばたとえ同じ会社に所属しているコンサルタントであっても実力や提供できるサービスの質的レベルには大きな差が生じているのが実態なのです。
そのため、お客様の方では、士業事務所やコンサルティング会社がどういったところなのかということだけで委託先を決めるのではなく、「その委託会社の中でどういった人がコンサルタントとして当社を担当してくれるのか」を確認するとともに、「そのコンサルタントが本当に信頼に足る人物であるか否か」を見極めた上で慎重に契約されることをお勧めします。
また、委託費用(コンサルティングフィー)の安さだけで契約するのも危険です。なぜなら、コンサルティング費用の大半は人的な投入工数と提供可能な質的レベルで決まってきますので、優秀なコンサルタントが担当する場合には総じて高めの費用設定となるためです。